料亭つたも主人・深田正雄の住吉の語り部となりたい

第30回(2013.9.24)

栄ミナミの「なごやめし」と老舗変遷

栄ミナミで戦前より同じ土地で飲食店を継続営業しているのは、わずか2軒のみです。

一八本店 住吉町三丁目
一八本店 住吉町三丁目

住吉3丁目南角の明治初期創業のうどん「一八本店」。和風の飾らない引き戸をくぐると、昔風食堂の内装が見えます。店内は敷居の無い5脚のテーブル席があり、都会の喧騒を離れた雰囲気は、ちょっと貴重です。祖父良矩が語るには、一八とは「たまり1、出汁8の割で汁を作っていた?」と、祖父良矩と同年明治21年生まれの先々代がいっていたとの事です。尾張に数ある「麺類一八…」の元祖ではないかと思われます。戦災で一帯はすべて焼失しましたが、同店の近隣四軒のみ焼け残りました。西隣の早川商店はそのまま大正時代の建物ですが、一八さんは昭和34年に改築されましたが、昭和ロマンの趣が楽しめます。そして、もう一つは、創業100周年の我が料亭蔦茂です。

「なごやめし」という言葉は、ゼットン稲本社長が東京進出時にメニューにつけた呼称といわれていますが、「ひつまむし」と並び、当地区の「味噌煮込みうどん」「味噌カツ」が全国的に知られるようになりました。

山本屋総本家は大正14年に大須で創業。初代店主のもと、町田守一氏の妻雪枝さんが奉公で勤めていたことをきっかけに、戦後に屋号を譲り受け、名古屋市中区南呉服町2丁目7番地にて昭和24年開店。昭和30年、矢場町1丁目(現在栄ミナミ平和ビル)に移管し、お隣では町田のおじいちゃんが床屋さんも営業されていました。

大きな座敷もある数寄屋造りの店で信楽土鍋の蓋に穴がない、薬味入れは2尺以上の煤竹、ゴロットした超太の角箸で食べる名物が懐かしく、そして、八丁味噌の香りが店前通りに漂っておりました。3代目町田善一さんは民社党幸友会(春日一幸議員の後援会)世話役でご指導いただき、とても麻雀好きでお付き合いさせていただきました。近年は女婿の小松原克典専務のリードで、各百貨店ギフト販売にも注力されています。

「矢場とん」は昭和22年大津通り4丁目電停前・現在地で創業、会社のHPによれば、

「雑踏の屋台で、一人の客が何の気なしにつまみで食べていた串かつを、おもむろに“どて鍋”のたれにドボンと浸して食べてみた。そして一言「こりゃ~美味い!」。たまたまそこに居合わせた客も試しに食してみると、「なるほど、これはいける」と。実はその人こそ「矢場とん」の初代店主、鈴木義夫でした。

とのこと、現在は「なごやめし」の代表格として全国展開ですが、私には、ナゴヤ球場の売店も懐かしい思い出です。

うなぎ・いば昇 南呉服町二丁目むつみ小路
うなぎ・いば昇
南呉服町二丁目むつみ小路

南呉服町2丁目「うなぎ・いば昇」は明治のころ武平町で創業、戦後昭和26年に現在の「むつみ小路」にて再開。現在は4代目木村隆之さんがオーナーです。30mほど南の飛び地に駐車場と井戸があり、井水で養殖うなぎを2日間位たてると身がしまり、脂ものるようです。「ひつまむし」もさることながら、昔ながらのチョット濃いたれの味付と、蓋まで「チンチン」に熱いうな丼は僕の母親の味のようなものです。先代の漬けた手作り奈良漬がもう一度、賞味できれば嬉しく思います。なお、「ひつまぶし」はあつた蓬莱軒さんの商標登録とのことです。

洋食では南伊勢町2丁目「レストラン・ブギ」のビーフシチュウ、ポタージュスープ、そしてカツサンドの味が懐かしく、本格手作りのソースが話題でした。気が付いたらファッションヘルスに業態が変わっていたのが残念です。10年ほど前、青森の郊外で「ブギ」というお店に立ち寄ったらなんと同じ味でビックリ! 名古屋ブギで修行して、奥様の実家の青森で創業されたと伺いました。

そして、「とんかつ八千代」。さらっとしたヒレカツと独特のソースで一世を風靡、中店が住吉1丁目郵便局隣“栄銀座”にありました。本店のコックさんが丸の内東急インレストランに移り、シャングリラというレストランで思い出のカツライスを味わっていましたが、時代と共になくなったのが寂しく思われます。

元伍味酉
松竹小路入口の元伍味酉・南呉服町一丁目、
昭和30年代当時、現在は丸栄南館

居酒屋さんでは、丸栄南の松竹小路入口の伍味酉さん、ガラクタ骨董品がいっぱいならび賑わっていました。名古屋における居酒屋の元祖。昭和53年に2代目佐藤嘉晃さんが社長に就任され、多店舗展開スタート、地域のリーダーとしても活躍されました。ゼットンの稲本社長は嘉晃さんの女婿にあたります。

今年も第3回名古屋グルメ選手権“NAGO-1グランプリ”を10月4日より14日まで矢場公園で開催、栄ミナミ飲食店の伝統の味とチャレンジ魂をお楽しみいただきたく思います。

料亭つたも・わらび餅が昨年第3位入賞、今回は新作デザート「天の糸」でグランプリを目指しますので、ご支援ください。

次のシリーズは栄ミナミの路地裏と飲食店をご紹介しましょう。住吉小路、B1ストリート、栄銀座…思い出いっぱいの居酒屋街です。