料亭つたも主人・深田正雄の住吉の語り部となりたい

第76回(2017.7.22)

60周年!伏見地下繊維街から「立飲み屋・長者町横丁」へ

名古屋の地下街は昭和32年11月15日の地下鉄開業と同時に名駅名店街、栄町名店街がオープンし、1日遅れで長者町地下街がデビューした。長者町地下街は繊維問屋ばかりが地下に店を出す、世界に類を見ない地下街として話題となる。(伏見地下街HPより)

オープン直後の長者町地下街   完成記念の銘板
オープン直後の長者町地下街・昭和32年、繊維問屋が並ぶ HPより   竣工完成記念の銘板:鋳造・後藤銅器店(下長者町4-5)は創業100年の老舗

竣工記念の銘板には、長者町繊維街の理事が居並ぶ中で、本町衆の瀧定・瀧潤次郎氏、万兵・山村豹平氏が後ろ盾、異色なヘラルドグループの古川為三郎氏(フルタメ)の名前が目立ちます。地下繊維街の中にパーラー喫茶店をオープンされたようです。

祝・竣工の名を寄せる当時の名古屋市長・小林橘川翁は、昔、橘川道路と呼ばれた100m幅などの巨大道路建設に伴い、一大プロジェクトを実施。戦前3間幅であった蒲焼町通りを高架鉄道にする計画を変更し、幅員40m、6車線の「錦通り」と名付け、露天掘りで大きな穴を掘り、名古屋駅・栄に地下鉄を開設。そして、線路の北側に長者町の商人だけの地下街を開設することとなりました。

これをリードしたのが中栄(株)横井栄一郎翁(理事長)。繊維業者のとりまとめだけでなく、店舗も本町大和生命ビル北に進出されました。彼は、愛知県知事・桑原幹根氏の盟友かつ選挙参謀として昭和26年より6期24年もの間支援したことは、語り草となっています

特に、桑原知事の猿投グリーンロード周辺「地域開発博」構想から、昭和42年横井氏個人名義で広久手町2万㎡、中栄(株)で南山口町10万㎡、その後、海上町に7万㎡の土地の買い占め、そして、仲間のフルタメさんは昭和42年に広幡町に42万㎡を購入し、「金閣寺」を建てる夢プランが街の話題となりました。小生の計算によると、横井さんの坪200円くらいで買収した地域が、平成7年頃には万博関連用地として約2万円前後で行政に売却されたようです。桑原時代に背負い込んだ、名古屋の東部に広がる土地開発という名の「亡霊」。それに陽の目を見させるための愛知万博が、平成17年に開催されました。 (財界展望1995.12、今枝英多郎氏コメントより一部抜粋引用)

小池建夫理事長紹介・中日新聞
小池建夫理事長紹介・中日新聞H26.5.5
人情交差点シリーズで連載時

昭和31年に結成された長者町地下街繊維問屋協同組合は、初代理事長に横井栄一郎氏が就任し、平成6年までなんと37年の長期政権? となりました。2代目には横井一氏が就任され、出店者を対象に運営する「長者町地下発展会」が発足しましたが、繊維業の衰退とともに人の往来も少なくなり空き店舗も目立つようになりました。そして、平成11年に「伏見地下街協同組合」に名称変更、平成19年6代目理事長のなり手がなく、我が尊敬する小池建夫氏が就任されました。

当時は退店者が相次ぎ、一時は3割くらいが空き家で廃墟の洞窟のようでしたが、旧来の地権者の意識改革に苦労しつつ理解を得ながら、様々なトライアルを重ね、新展開を模索されていました。爾来、全国でも例のない民間運営の60年の歴史・昭和レトロ文化と人情味溢れる商店街再生がスタートされました。

通路のマジックアート  長者町通り東側入り口
通路のマジックアート:トリエンナーレ2013作品【長者町ブループリント】      長者町通り東側入り口。長者町横丁の新看板が呑み屋横丁への転換を象徴

再生のきっかけは第2回「あいちトリエンナーレ2013」台湾のアーティスト・打開連合設計事務所が描いた【長者町ブループリント】のマジックアートでイメージ一新!

レトロストリート骨董市を毎月開催。手作り市、長野ワインフェスタ、長者町通りのえびす祭に共催して「大黒祭り」、立飲みイベントの企画実施などで話題作りをされ、初めて地下街を知る人も多くなりました。

そんな頃、2015年11月、USA帰りの後藤謙太郎さんが「ハンサムバーガー」、翌月にはイベント大好き大島真さんが「伏見立呑・おお島」を開店。チャレンジ精神いっぱいの若いパワーが地下街を再活性化させる動機づけとなり、見事、飲み屋横丁としてよみがえりました。いまや、伏見駅東改札口から長者町通りまで、全長240mの地下街は、6坪の53コマに個性ある40店舗がびっしりと軒を連ねています。出店希望も多く、ウエイティングになっている様子です。

今も頑張る婦人服卸・小出商店

ほぼ中央にある小出商店さんは最も古参の婦人衣料卸として、卸業ではゼビアンさんと共に頑張っています。今年3月開店「チカ酒場のり、5月開店「蕎野(そうや)」、今夏には「酒津屋・酒処」と、立飲みスタイルが人気で、通路でも楽しめる昭和レトロ路地裏屋台感覚がお客さんに大好評です。珠には、流しのギターの音色も一興を添えています。

このほど開業60周年を機に、大規模改装に乗り出すとのこと、経産省から「2016年度補正・商店街・まちなか集客力向上支援事業費補助金」に採択されました。名古屋市の助成金も活用して、3年間で1億5000万円を投資しての大改修や耐震化、デジタルサイネージ、そしてインバウンドに対応した新しい商店街のグランドデザインを提言しています。

また、小池理事長のリードのもと「祝日本遺産・おもてなし規格認証2017」に登録、記念事業イベント「第1回~酒と器とあなたに出逢う~」を8月26日開催、インバウンドPRで「第20回釜山国際観光展」9月8~11日に出店など、積極的な街づくりへの展開が話題となっています。

東山線・地下鉄改札の営業時間も延長され、トイレも完備。「新しく変わる長者町地下街」で楽しいひと時をお楽しみください。